父は朝早くから夜遅くまでずっと仕事をしている人だった。
平日に会うことは全くなく、休日は夕方まで寝ているか録画したテレビ番組を見ているだけで私や妹たちと会話をしようともしないので遊んでもらった記憶もない。
たまに家族で出かけても母と喧嘩してばかり。
父がいるだけで母の機嫌が悪くなり、常にピリついているから居心地が悪かった。
だからずっと父のことが嫌いだった。
私が高校生の頃に別居することになり、父は家を出て葛飾区にある実家に行った。
離婚調停を申し立てても出廷命令すら無視した父に対して母は会いに行く決意を固め、私と妹たちも一緒に父の元へ車で向かったが、あと少しで到着するというところで、
そこのショッピングモールに
寄ってほしい
どうしたの急に?
いいから寄って!!!
父の実家が近くなるにつれて母の様子がおかしくなっていたことに気がついた。
しかし理由を答えてはくれないので言われた通りにショッピングモールに向かった。
あいつの顔を見たくもないから
あんたが離婚の話をしてきて!
ショッピングモールに到着すると母はすぐに車を降りて私に離婚届を預け、妹たちも車に残したまま自分だけショッピングモールの中へと振り返ることなく走って逃げてしまった。
あまりに突然のことで呆気に取られて動くことができなかったが、ここまで来て父に会わないわけにはいかないと私は父の元へ行く決意を固めた。
1人で行くから
2人とも母さんと
待ってていいよ。
大丈夫だよ
一緒に行く
2人とも親父と
会いたくないでしょ?
無理しなくていいから
ここで待ってなよ。
ほんとに大丈夫だから
心配しないで。
一緒に行こう。
妹たちは行く必要がないので車を降りることを促しても頑なに降りようとはしなかったが不安の色が隠せないでいた。
それでも2人の覚悟も感じたので一緒に父の元へ向かった。
思い返せばこのときから
家族の崩壊は始まっていたんだ。
次回は「人生で初めて土下座した相手は6年ぶりに再会した実の父親だった。」を来週金曜日に更新します。
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