⑤人生で初めて土下座した相手は6年ぶりに再会した父親だった。

家族

自分の父親に土下座したことはありますか?

 

母が逃げ出してしまい妹たちと父の実家に行くことになった。
道中は誰もしゃべることがなく異様な緊張感に包まれており、気が付くと父の実家に到着していた

父の実家に来たのは何年ぶりなのか思い出せなかったが、家の外観はまったく変わっていなかった

妹たちを見るとその顔は強張っていて今にも泣き出しそうな表情で不安に押し潰されていることが明らかだった。

 

2人は何も話さなくて大丈夫だから

 

そう言った私も不安でいっぱいであることを必死で隠して震える指でインターホンを鳴らした。

 

玄関を開けて出てきたのは祖母だったが、私たちの顔を見ても誰だか分かっていない様子なので名前を名乗ったらようやく私たちのことを分かってくれた。

祖母に促されるまま家に入るとリビングには祖父もいたが、やはり私たちのことが分かっていない様子だったのを見かねて祖母が孫だと言うと声を出して驚いていた。

 

突然どうしたんだ

連絡もしないで

 

親父と連絡が

全く取れないから

直接会いに来た。

 

そうだったのね

呼んでくるから

ちょっと待ってて。

 

 

祖母に呼ばれてすぐに父がやってきた。

6年ぶりに再会した父の姿は白髪が増えて少し太っており、かなり老けた印象を受けた。

 

突然どうしたの?

 

ずっと母さんと

弁護士の連絡を

無視するから会いに来た。

 

忙しかったから連絡できなかった。

 

そんなくだらない

言い訳するなよ
離婚したくないから

無視し続けたんだろ?

 

・・・・・

 

もう俺たちは家族として

やり直すことはできないし
母さんは親父のことで

苦しんで離婚したいって

ずっと言ってる。
頼むから離婚してくれ。

 

・・・・・・

 

母さんと離婚してください

お願いします。

 

私は父に土下座した。

 

 

何してるの!!頭を上げて!!!!

 

祖母が慌てて頭を上げるように言うのも聞かず、私はしばらく頭を下げ続けた。

 

息子に頭を下げさせるなんて

なに考えてるんだ!!!

なんとも思わないのか!!!!

 

・・・・・・・・

 

頭を上げると父はじっと私のことを見ていた。

祖父が怒っても声を掛けるどころか表情一つ変えない父の姿を見た私はこれ以上は何を話しても無駄だと感じたので離婚届を渡して家を出た。

 

ごめんね、あんな事させて

 

婆ちゃんが

謝る事じゃないから

気にしないで。
突然ごめんね。

 

いいのよ・・・

 

泣いている祖母と祖父に見送られて私たちは母の待つショッピングモールへ向かった。

 

しかし父は私たちを見送るどころか
外にすら出てこなかった。

 

 

次回は「逃げ出して離婚話を押し付けたことを責め立てたら逆ギレした母」を来週金曜日に更新します。

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