⑫家庭崩壊の日 -家族を奪われて2400万円の住宅ローンだけが残った私-

家族

課長が6軒隣の部屋を買ったから

娘たちとそこに住む。

あんたはここで1人で暮らしな!

 

何言ってんだ?

6軒隣の部屋を買った?

マジで言ってんの?

 

あんたが出てけって

言ったからさ

課長と住むための

家を探してたら

ちょうど6軒隣に

空きが出たから

課長が買ったんだよ。

こんなに近いんだから

引っ越しも楽でいいしね♪

 

正気かよ?

6軒隣に引っ越すとか

普通の人間はしねぇよ!

 

どこに住もうが

私たちの勝手でしょ?

あんたには関係ないんだから

ガタガタ言わないでよ。

 

何で妹たちも

連れて行くんだ?

 

連れていくに

決まってるじゃない。

まだ高校生なんだし

私が育てないと。

あんたなんかに

育てられる訳ないしね。

1人だけ連れて行ったら

可哀そうだから

長女も連れてくから。

 

母が家を買うようにそそのかしたのか、課長が買うと言い出したのかは未だにわからないが、課長が6軒隣の部屋を購入したことは事実だった。

引越日が決まると母は毎日楽しそうに鼻歌を歌いながら少しずつ荷物を課長の部屋に持って行っていたが、対照的に妹たちは言葉を発さずに寂しげな表情を浮かべながら引越準備をしていた。

 

2人ともほんとに出ていくのか?

 

うん。

ママに住民票も移してあるから

一緒に暮らそうって言われた。

 

嫌じゃないの?

 

嫌だよ。

でもしょうがないじゃん。

もう決まったことだし。

 

私はまだ高校生だから

学校のこととか

ママにやってもらわないと

いけないから・・・

 

なんでこんなことに

なっちゃったんだろうね・・・

自分たちではどうにもできなくなっていることを2人とも理解しており、つらそうな顔を見たら母に逆らうことができなかったんだとわかった。

そんな妹たちを引き留める力が自分にはないと痛感した。

 

そして引っ越し当日は母も妹たちも何も言わず買い物に行くかのように家を出て行き、戻ってくることはなかった。

 

たった1人の男が介入しただけで今まで過ごしてきた26年間が無かったかのようにいとも簡単に家族が壊れた。

 

今まで家族が仲良く過ごした日々は何だったんだろう。

 

父に土下座して母と離婚してくれと懇願したのはなんだったんだろう。

 

家族のためと思ってこのマンションを買った意味はなんだったんだろう。

 

家族のために誰にも相談できず1人で散々悩み抜いた末に住宅ローンを組む決心をした意味はなんだったんだろう。

自分の人生を全否定された気持ちになり、とてつもない寂しさと虚しさと家族を奪われた悔しさがこみ上げた。

 

そんな哀れな私には誰もいない4LDKの広すぎる部屋2000万円以上の住宅ローンだけが残った

 

 

次回は「26歳になって想像もしていなかった初めての1人暮らしが始まった」を来週金曜日に更新します。 

 

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