あれから母が来ることはなくなった。
一度だけマンションのエントランスで出くわしたがお互い顔色一つ変えずに無視した。
同じ敷地内に住んでいるのに無視しあう親子というのはいかがなものかと自分でも思うがどうにもできない。
それから母と出くわすことなく数週間が経ったある日、仕事から帰ると玄関ドアに紙袋がぶら下がっていた。
なんだこれ?
どうしたの?
この紙袋がぶら下がってた
あー、ママからのお土産だよ
お土産?
うん
課長の実家が博多にあるんだけど
最近は毎週行ってるって言ってたから
そのお土産だよ
博多に毎週行ってんの?
なんのために??
課長のお父さんとお母さんが
亡くなったから
片付けとか相続のこととか
手伝ってるんだって
結婚もしてないのに
相続のことに口出ししてんのか?
よくわかんないけどそうらしいよ。
地主だからすごい広い土地と家を
持ってて、片付けするのが
大変だーって言ってたよ
どうやら母は亡くなった課長の両親が遺した財産を狙っている。
そもそも結婚すらしていないのに課長の実家に毎週出向いて積極的に片付けを手伝った挙句に相続の口出しをするなんてどういう神経をしているのかまったく理解できないが博多へ出向くほどだから莫大な財産があるんだろう。
母は手元にあるとすぐに使ってしまう浪費家でもあり、お金に困ると銀行から借りて自分が借りられなくなれば私の名義で借りたこともあるほどお金に執着するので財産を狙っているのは間違いない
博多へ行くのにかかる費用を課長がすべて工面しているのは間違いないが、毎月の住宅ローンと管理費を支払いながら毎週博多へ行くことができる課長が一体どれだけお金を持っているのか全くわからない。
それならばなぜ一括でマンションを購入せずに住宅ローンを組んだのだろうと疑問が湧いた。
住宅ローンを組めば利息が発生して余計なお金を払わないといけないから手元に大金があるなら迷わず一括購入をするのが普通なのに住宅ローンを組んだということはマンションを一括購入するだけのお金はもっていないということになる。
しかも課長は自衛官を定年退職して嘱託勤務をしている身であるので自衛官時代よりも確実に月収が減っているのは確実なのに元々住んでいたマンションを手放して6軒隣の部屋をローンを組んで購入した目的はなんだろうか?
次回は「家族を壊した課長が6軒隣の部屋を買った理由は若い女と一緒に住みたい欲望と私への復讐」を来週金曜日に更新します。
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