【考察】シン・ウルトラマンが成功したと手放しで喜べない4つの理由

ウルトラマン

2022年5月13日に公開された「シン・ウルトラマン」は初日から8月4日までの84日間で観客動員数294.8万人、興行収入43.8億円を記録。

この記録は本作公開前までウルトラマン映画としては歴代最高の興行収入8億3800万円を記録していた『大決戦!超ウルトラ8兄弟』をわずか3日で上回り、その5倍以上の興行成績を上げて歴代最高記録を更新。

海外の映画祭にも出品され、大盛況。さらには37の国と地域でも公開されることが決定されるなど盛り上がりを続けている本作は成功を収めたと言っていいだろう。

 

 

しかし俯瞰で見てみると手放しで喜べない事情が顔を覗かせる。
この記事ではその喜べない事情を掘り下げていく

 

目次

競合作が強すぎた

公開からわずか2週間後の2022年5月27日に「トップガン マーヴェリック」が公開されて大ヒット公開81日目の8月15日までで観客動員数699万人、興行収入110億を突破し未だに成績を伸ばし続けている。

さらには2022年7月15日に公開された「キングダム2 遥かなる大地へ」は公開35日目の8月19日までで観客動員数284万人、興行収入40億円を突破したので2022年邦画実写作品No.1の座を持っていかれるのは確実。

そして2022年8月6日公開の「ONE PIECE FILM RED」は公開16日目の8月22日に観客動員数665万人、興行収入92億円を突破。

そのほか「ミニオンズ フィーバー」や「ジュラシックワールド」もそれぞれ興行収入30億円を突破して現在も成績を伸ばし続けているなど5月の公開からわずか3ヶ月で軒並み強力な作品が公開され続けたので「シン・ウルトラマン」はその影に完全に埋もれて興行成績を伸ばせなかった。

さらには2021年の邦画実写作品No.1である「東京リベンジャーズ」の興行収入45億円という記録も抜き去ることが出来ていないのも寂しいところ

上記の作品はすべて根強いファンを持つ人気作かつ続編映画であるので既に一定の固定客を得ていたので軒並み興行成績が振るったと推測できる。

そしておそらくは初見の人が見ても楽しめてまた観たいと思わせる作品なのではないかと思う。

それに比べると「シン・ウルトラマン」は・・・

 

テンポが速くて一見さん置いてけぼりの完全マニア向けの作品

ウルトラシリーズの熱烈なファンとして知られている庵野秀明と樋口真嗣が制作した本作はネロンガの電撃攻撃を受けても微動だにしないウルトラマンにせウルトラマンの頭部をチョップして痛がるウルトラマンなど随所に初代ウルトラマンのオマージュが数多く見受けられ、その愛をひしひしと感じる仕上がりになっているのでマニアにこそ徹底的に響く作品となっているが反面、映画自体のテンポがとても速く今作で初めてウルトラマンを観た人は置いてけぼりにされる。

 

私は本作を劇場で3回観賞。
3回とも別々の友人(3人ともウルトラマンを観たことがない)と行ってそれぞれに感想を聞いたら

 

初めて観たけど普通に楽しめたよ。

でも所々よくわかんないとこが

あったのとテンポが速すぎた。

また見ようとは思わないかな

 

楽しかったよ。

でもやっぱりウルトラマンとか

怪獣はありえない存在だから

のめりこめなかったな

 

完全にエヴァだね!

でもテンポが速すぎて

ついていけなかったな

 

楽しめたけれどテンポが速くてのめりこめないというのが共通意見だった。

私も毎回テンポが速いと思ったし、ウルトラマンを知り尽くしているからこそ楽しめるオマージュのオンパレードで一見さんが置いてかれても無理はないので結果としてマニアだけが楽しめる映画と化してしまい一見さんはリピーターにならず興行成績が思うように伸びなかったと考えられる。

そしてある作品と比べて思ってたのと違うと感じた鑑賞者の声もチラホラと・・・

 

シン・ゴジラのリアル路線を期待していた人に響かなかった

庵野秀明と樋口真嗣のタッグ作として思い浮かぶのは2016年に公開された「シン・ゴジラ」

 

 

「現代日本に怪獣が現れたら」をコンセプトに制作された本作は徹底的なリアリティ描写が話題を呼び、興行収入82.5億円を記録。日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ数々の映画賞を総なめにするなど大きな話題となった。

庵野×樋口コンビの制作したシン・ウルトラマンもシン・ゴジラのようなリアル路線の映画だと期待していた人が多かったが、蓋を開けてみれば全くリアル路線ではないエンターテインメント作だったので期待外れという感想が散見された。

 

《楽しいが、前作(『シン・ゴジラ』)のようなパンチと重厚さに欠ける。『シン・ゴジラ』は単なる著名なシリーズ作品のノスタルジックなリブートではなく、日本の官僚機構、軍事的能力の限界や東日本大震災のトラウマについて批評するための手段でもあった。『シン・ウルトラマン』は愛されてきたキャラクターを用いて現代日本社会を描くことにはあまり関心がなく、古いオモチャで遊ぶことのほうに興味があるようだ》

 

《完全に見やすい映画であるが傑作にはほど遠い。クリエイター達に対して与えられた創作上の自由度がこの映画を最高にも最低にもしていることは明らかだ。結局のところ、『シン・ウルトラマン』は原作と同様に映画ではなくテレビシリーズにすべきだったという気がしてならない。結果、我々に残されたのはやり過ぎかつ少し物足りない映画である。けれども、半世紀前の『ウルトラマン』や同様の特撮番組へのラブレターとしては十分な作品である。ノスタルジックなスペクタクルであり、なぜこのシリーズが今でも人気を保ち続けているのかを理解することはたやすい》

 

《『シン・ゴジラ』とは異なり、巨大怪獣の存在がもたらす現実的な存亡の危機は感じられない。それは映画全体にも言える。政府の官僚制の弱さについての多少の言及を除けば、『シン・ウルトラマン』は基本的には頭を使わずにノスタルジックで楽しい時間を過ごすことに終始している》

 

上記の感想は海外の批評的反応であるが、3つとも本作を的確に批評した秀逸な感想である。

私も最初に観たときは「とても楽しめる映画だが圧倒的にリアリティが欠けていて絶賛とまではいかない」と思った。

 

本作のタイトルには空想特撮映画と謳っているのでリアル路線ではないと初めから明言しており、ウルトラマンを題材にしている時点でリアリティを追求するのは不可能なのでエンターテインメントに振り切ったのは間違いではない。

しかし庵野×樋口コンビというだけでリアル路線を期待してシン・ゴジラと比べてしまう人が多いのも無理はなく、こういった人たちの共感を得ることができなかったのもシン・ウルトラマンがシン・ゴジラ以上のヒットにならなかったのだろう

事実、「シン・ウルトラマン」の公開3日間の興行収入は9.9億円であり「シン・ゴジラ」の公開3日間の興行収入6.2億円を上回る成績を収めたので本作の期待値が高かったことがうかがえる。

しかし公開2週目で早くもシン・ゴジラの21.5億円を下回る20.3億円となり、期待していたものと違うと感じた人たちがマイナスの感想をSNSに上げた結果、シン・ゴジラの約半分の興行収入に甘んじる結果となってしまった。

そしてとある悪評がさらに追い打ちをかけた。

 

悪目立ちしてしまったセクハラシーン

本作の感想で多かったのは長澤まさみへのセクハラシーンに嫌悪感を示した人たちの声

《セクハラ描写が正直キツかった。アウト》

《一言で言うとまんま昭和。現代の女性と仕事したことないおじさんが作った感ありありですね》

《長澤まさみを映すアングルが全体的にちょっと…ね。今の時代にそんなのやるなよって思う》

《正直、この内容では子どもに見せられないな。長澤まさみの描き方がオヤジ目線で気持ち悪い》

《長澤まさみを捉えるカメラアングルが全体的に(巨大化時は特に)気持ち悪いので-1億点》

 

実際、「巨大化した長澤まさみのスカートの中が見えそうになるシーン」や「長澤まさみが斎藤工に匂いを嗅がれるシーン」が存在する。

最初に見たときはセクハラとは全く思わなかったが、後に上記の感想を読んで改めて2回3回と観賞したらセクハラと捉えられても仕方がないシーンであると納得したので上記の否定的な感想があるのは無理もない。

SNS上には《セクハラ描写があるらしいので見るのやめた》など映画を見る前に判断している人も多く、セクハラシーンが尾を引いて客足を遠のかせてしまったのは否定できない。

 

まとめ

以上がシン・ウルトラマンが成功したと手放しで喜べない事情である。
期待外れという声も散見される本作だが、初代ウルトラマンへの大きな愛情とリスペクトに満ち足りた作品であることは間違いがない秀作である

続編の構想もある本作だが、今回の成績で果たして制作されるのか続報を待ちたい。

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